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#3 かなり上、わりと下

そうなのだ。

同じ大学の同じゼミ出身なのに、怜奈とあたしは格差社会のかなり上とわりと下の両極端に位置している。

怜奈のお父さんは会社の経営者で、お母さんは専業主婦。
兄貴はIT企業勤務で、30歳にして年収2千万。
怜奈は親のコネで大手商社の花のOL一年生。おしゃれと海外旅行と合コンに明け暮れる、優雅な日々。

いっぽうあたしの両親は、茨城県水戸市の郊外で昔ながらの町のパン屋を営む。
大型ショッピングセンター進出のあおりで、商売はかなり傾きかけてる。
妹は来年大学受験で、社会人になったあたしに仕送りする余裕なんて、もちろんない。

なのにあたしの身分は、フリーターなのだ。

就職氷河期でもないはずなのに、受けた就職試験はことごとく失敗。面接にこぎつけたのはたった二社。
そこでもあえなく自滅した。

成績がいいわけじゃなし、クラブ活動に熱心だったわけじゃなし、容姿端麗なわけじゃなし。
くわえてコネなし、やる気なし。
そんな新入社員、あたしだっていらんわ。

てなわけで、ほかにチョイスもなく、フリーターになった。

実家に帰って家業を手伝う、というのも考えたが、親から給料をもらえるはずもない。

親伝授のパン作りの腕だけはあったので、代官山にあるおしゃれなベーグル屋でアルバイトを始めて半年が経つ。

格差の上と下に位置していても、怜奈はけっこういいやつだった。

怜奈はあたしの作るパンやお菓子が大好きで、ゼミで仲良くなったのも、あたしがランチタイムに手作りスィーツやサンドイッチを持っていったからだ。

「夏輝のケーキが世界一だと思う」とか、
「夏輝がパン屋を開くなら、あたしのパパに言って出資させる」なんてことまで言う。
冗談だろうと思いつつ、そこまで言われるとさすがに悪い気はしない。

OLになってからも、ランチタイムにうちの店にデリバリーを時々頼んでくれる。

一度だけ、デリバリーの男の子が急に休んで、あたしが届けに行ったことがある。

青山にある、とんでもなく巨大な本社ビル。業者が入ることが許されないので、通用口で怜奈を待つ。
そのあいだに次々に出てくる女の子たちの華やかなことといったら。
自分と同じ生物だと思えずに、なんていうか、あたしはため息をつくしかなかった。

「あれ~? 夏輝、わざわざ来てくれたんだ?」
怜奈のうれしそうな、でもちょっとだけ誇らしそうな表情。
あたしは複雑な気分だった。

怜奈はすごくいいやつだけど、会社がらみの合コンにあたしを誘ってくれたことはない。

わかってる。

そんなとこにあたしが出てったら、ひとりだけ全然つりあわないはずだもん。
「そのうち声かけるよ」と怜奈は言ってくれてるけど、その気配はない。

そのくせ「きのうの合コンでまた3人からお申し込みいただいちゃいました☆」なんて自慢げなメールがしょっちゅう送られてくる。
お嬢さまの天然というのか、悪気がまったくないだけに、憎みようがない。

怜奈とあたしの微妙な距離は、少しずつ少しずつ、広がっていくような気がする。


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コメント

わりと下な本来の自分。でも、少しでも上に行きたくて、背伸びして、今の自分がいる。もうすぐ10年…やっぱり、背伸びし続けるのって疲れる。若い頃(まだ20台だけどさ)は無理しても何とかなったけど、3年連続体調を崩し、入院して、どんどん体力がなくなってるのが、身にしみて解る。
もう、潮時だね。仕事を辞めて、自分らしく生きよう。過労死なんてごめんだもんね~

投稿: kasa | 2007年10月30日 (火) 15時09分

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