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#24 来る、来ない?

一週間後。

そわそわそわそわ、ドキドキドキドキ、はらはらはらはら。
朝からずっと、そんな調子だ。

「ちょっとお~夏輝? 大丈夫なのあんた?」
昼前に、ややちゃんが見かねて声をかけてきた。
「だ、大丈夫って? なな、何が??」
「だってあんた、そうとう挙動不審だよ。仕込みの時だって小麦粉と粉砂糖間違えて入れそうになるし、レジは万単位で打ち間違えるし・・・・・」

そうなのだ。
今日のあたしは、かなりテンションが上がりっぱなのだ。

なぜって、今日は特別な日。
アンドリューが、店にやってくる日なのだ。

怜奈情報によると、彼はおととい東京入りしている。で、今日は週末で午後まで予定がないから、「デイリー・ベーグル」に行く、って言ってるらしいのだ。

ただし、怜奈と一緒だけど。

いやいやいや。そんな細かいことはこの際言うまい。
怜奈とツーショットだろうがほんの5分だろうが、あたしにとっては、彼がここにやってくること自体が重要なのだ。

アンドリュー。

ブライアント・パークで、偶然に出会った人。でもって、あたしにベーグルを買ってくれた人。

エグゼクティブなのに、ちっとも気取らない人。

たった十分かそこらしか一緒にいなかったのに、特別長い会話したわけでもないのに、こんなふうにあたしをどきどきさせる人。

ああ、このきもち、なんだかかなりヤバい感じ。

あたしがここにいる、ってわかってるよね。
だから来る、なんてことないかな。

怜奈をさしおいて、そんなことはあるわけないんだけど。

だって、もしこれがマンガだったら(マンガじゃないけど)、えてしてそういうデキるオトコは、カンペキな女子よりも、ちょっとマヌケでトホホな女子のほうを選んだりするもんじゃないのか?

などと、たった1ミリの可能性にかけてみたい気分になる。

無駄な努力かもしれないけど、こうなりゃ1ミリの可能性を3ミリくらいに広げるくらいのことはやってみよう。

ってことで、きのうは半身浴して、試供品でもらった毛穴パックをして、コンビニで買ったラメ入りネイルカラーをした。
出かけるときは一番ましなワンピを出して(仕事中は制服に着替えるからまったく関係ないんだけど)、いつもはほとんどしないけど、メイクもした。
その姿で現れたから、冒頭からややちゃんに不審がられたのは仕方がない。

昼が近づくにつれ、胸の鼓動がどんどん早くなってくる。
店のドアが開くたびに、ぎゅっと目をつぶってから顔を上げる。
入ってくるのが青い目でないことがわかるたびに、がっかりするような、ほっとするような。

時計の針が12時を指した。店が一番混む時間帯だ。

12時5分・・・15分・・・30分・・50分。
1時・・・1時10分・・・1時20分・・・

期待と緊張は、しだいに不安に変わっていく。

来ない。

まだ、来ない。
怜奈からのメールもない。

どうしちゃったんだろう。もしかして、このまま・・・・・・

膨れ上がる不安に、押しつぶされてしまいそうだ。

2時を過ぎて、ランチにも出かけられず、あたしは肩を落として途方に暮れた。

もう、来ないのかな。

その時。

「いらっしゃいませ・・・あ、怜奈ちゃん?」
ややちゃんの声がした。
あたしは顔を上げた。
「夏輝。遅くなってごめんね」

元気いっぱいのこえで、満面の笑みの怜奈が立っていた。

そして、怜奈の横に立っていたのは・・・・・・

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