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#27 知ってたの?!

松井の問いかけに、アンドリューが目を丸くして返した。

「え? 君もナツキのこと、知ってるのか?ヒデキ」

・・・・・・ええっ?!

「ちょ、ちょっとそれ・・・・・・マジで?!」
あたしはショーケース越しに、松井に向かって叫んだ。
「あんたの名前、ヒデキっていうの?! マツイヒデキ?! 嘘でしょ?!」

ってどうしてそんなとこに反応してんだあたし?!

怜奈は松井とアンドリューの顔を両方見比べて、「なにそれえ~」と不機嫌な声を出した。

あわっ。や、やばい。
怜奈が自爆モードに入ってしまった。

「自分が主役じゃない」と気づいたとたん、怜奈は捨て身の攻撃に出る。
大学時代、これに何度か遭遇した。
ゼミの男の子たちと群れてるときとかに、自分が入っていけない話題になったり別の女の子の話になったりすると、「あーあ。怜奈、今夜ひとりぼっちなんだ・・・・・・」
みたいな向こう見ずかつ罪作りな発言をする。それは男子の耳に到達する瞬間に、
「あっためて・・・・・・*」
と聞こえる仕組みになっている。
こうして、何人のオトコを二度とはい上がれない怜奈地獄に陥れたことだろう・・・・・・

「ふたりとも夏輝と知り合いだったなんて。なんで怜奈に教えてくれなかったのっ」
怜奈は自爆直前のぷうっとむくれ体勢に入った。
この時点で男子の気を引くことに成功したら、捨て身の攻撃には至らずにすむ。

アンドリューと松井は顔を見合わせた。

「確かに私は『デイリー・ベーグル』に行きたいとは言ったけど、君はそこに知り合いがいる、って教えてくれただけじゃないか。それがナツキかどうかなんて私にはわからないし」

おおっ。じゃ、やっぱり怜奈が言ってた「かつて代官山に住んでたエグゼクティブ」っていうのはアンドリューのことだったわけね。

あたしは一瞬ほっとして、またすぐにひやっとした。

ってことは、やっぱ怜奈がキュン死しちゃった相手って、アンドリューだってことじゃないか?!

「おれはアンドリューと怜奈ちゃんが行きたいってとこについてきただけだよ。『デイリー・ベーグル』って聞いて、ああそういやこないだブライアント・パークでたまたま出会った子が勤めてるっけな、くらいに思っただけだし」

アンドリューは愉快そうなまなざしを松井に向けた。

「へえ、君も彼女にブライアント・パークで会ったのか。私もたまたま、出勤前にベーグルを買いに行ってぶつかっちゃってね・・・・・・ちょっと話しただけだけど、私の大好きな『デイリー・ベーグル』に勤めてるって聞いたから覚えていたんだ」

ええ、ええ。はい、はい。その通りです。
まったくその通り。

こくんこくんとうなずきながら、あたしはほとんど限界に情けなかった。

・・・・・・負けた。

なんでだかわかんないけど、あたしはその場で敗北宣言したくなった。
アンドリューにとっても、松井にとっても、あたしはやっぱり通りすがりのベーグルマニアの女子に過ぎなかった・・・・・・

「なあんだ。そっかあ」
怜奈が露骨にほっとする。
一瞬でもあたしがこのNY二大男子の話題をさらったことで一気に自爆の道を進むかと思いきや、けろっとして怜奈は言った。
「じゃあ、メンバーそろったところでランチに行こっかあ」

「ちょっと待って。その前に私もベーグルを・・・・・・」
アンドリューはわくわくした表情で、ケースをのぞき込んだ。

「これがいい。ハニーキャロットベーグル!」

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コメント

初めまして。
小説を読んで私も興味がわきました。

投稿: プルー | 2007年12月15日 (土) 23時18分

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