« #27 知ってたの?! | トップページ | #29 ふたりの秘密 »

#28 ふたりの関係

そんなわけで。

アンドリューと松井ヒデキと怜奈とあたしは、秋の土曜日の午後の西郷山公園へと、遅いランチに出かけた。

あたしの頭のなかは、かなり混乱していた。

なんなんだろ、いったい、これ?
なんでこのメンバーで、ランチに行くんだろ?

しかもニューヨークじゃなくて東京で。
ブライアントパークじゃなくて西郷山公園で。
シチュエーション的に、ありえない展開。

公園へ向かう道々、両側に背の高いイケメンニューヨーカー(とりあえず松井もそう言えなくもないし)を従えて、怜奈はきゃっきゃとはしゃいでいる。

お前は幼稚園児か?! 

と、これがややちゃんとかなら、とツッコミのひとつも入れたいとこなんだが。

あたしは下を向きっぱなしの顔を上げて、怜奈の後ろ姿を眺めてため息をつく。
超お嬢系キレイめOL週末スタイルの怜奈と、店のロゴ入り白にブルーのストライプのコットンシャツ&コットンパンツ&スニーカーのあたし。

この歴然たるファッション格差。

負けた・・・・・・
と二度目の敗北宣言をするほかない。

と、アンドリューが振り向いた。目が合って、どきっとする。

「どうしたんですかナツキ? さっきからずっと下を向いて歩いているね?」

もう一回、どきっとした。

ってことは、何度かこっちを振り向いてくれてたってこと?

「腹減り過ぎたんだろ?」
松井も振り向いて言った。
こいつぅ・・・・・・アンドリュー王子のようなやさしさのかけらもないのかっ。

「ちょっとジェラシーなのかも。怜奈がステキな男子ふたりに囲まれちゃってるから」

ああっ姫。その通りでございます!

ほんと、直球でイタいとこにぶつけてくるなあ怜奈は。

西郷山公園に到着すると、アンドリューと松井は同時に「ああ~っ」と長い両腕を空に伸ばして深呼吸した。
「ああ、生き返った。せっかく東京に帰ってきても、会議会議会議。生きた心地がしないよ」
アンドリューは、伸び伸びとしてそう言った。

彼は正真正銘のエグゼクティブだった。
ニューヨークの大手投資ファンドの若き副社長をしているという。
「ニューヨーク」「大手」「投資ファンド」「若き」「副社長」のどの単語をとっても、ニッポン女子のハートを高鳴らせないものはない。怜奈がキュン死するくらいなんだから、あたしだってキュンキュンしまくってあたりまえだ。

「ほんっと、お前んとこのトップマネージメントはきびしいからな。最強のハゲタカだよ」
と、アンドリュー王国を平気でハゲタカの群れ扱いする松井は、正真正銘のグラフィック・デザイナーだった。
アンドリューが日本に駐在時代に、なんとこの西郷山公園で会ったんだと。
ふたりとも食いしん坊で、あちこちのグルメを食べ歩き、すっかり親友になった。
アンドリューに誘われて、ニューヨークのデザイン会社に入社。実はもうアシスタントは卒業して、ぴんで動くデザイナーとして、がんがん大手クライアントの仕事をこなし、いまはアンドリュー王国の家紋(つまりアンドリューの会社のロゴ)の担当をしているとか。

今回の来日は、アンドリューの出張に松井が同行。
会社が急成長していることもあり、日本支社も含めて全社的なブランドイメージの統一を図るプロジェクト(そういうのをコーポレート・ブランディングというそうな)をやるとかで、そのチーフデザイナーにばってきされたんだと。

事実は小説より奇なり。と、昔の人は言ったとか。
でもまあ、あたしに言わせれば、現実はマンガを超える、って感じだ。

|

« #27 知ってたの?! | トップページ | #29 ふたりの秘密 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« #27 知ってたの?! | トップページ | #29 ふたりの秘密 »