#32 甘メンズ
中野サンプラザ付近のファミレス。
テーブルの向こう側に、NY二大男子がそろって座ってる。
アンドリューはこざっぱりした白いシャツに黒いパーカー。でもよく目を凝らすと「PRADA」の赤いタグが袖についている。こういうのをエグカジ(エグゼクティブカジュアル)とでも言うんだろうか。
松井は定番「55 MATSUI」の紺色Tシャツに長袖シャツの組み合わせ。ついでにNYヤンキースのキャップまで、念入りに被っている。
でもってふたりの前にはマロンクリームパンケーキだの抹茶とあずきのパフェだのきなことバニラアイスのワッフルだのが所狭しと並んでいる。
あたしは右手にフォーク、左手にスプーンを握り締めて、ずらりと並べられたスイーツをぽかんと眺めるばかりだ。
「んん、このパフェはちょっと甘すぎるなあ。日本的なおだやかな甘みに欠ける。そっちの『抹茶とフルーツのエクストラサンデー』はどうだ、ヒデキ?」
「子供だましだな。一番底にあるコーンフレークにかかってるイチゴ風味のソースが、抹茶味とミスマッチすぎ。そっちの『和三盆の季節のブリュレ』はどうなんだよアンドリュー?」
な・・・・・・なんなんだこの甘メンたちは?!
アンドリューがなぜか中野のファミレスに来ていると知って、あたしは一度はくじけそうになったが、ありったけの勇気をふりしぼって立ち上がった。
こうなったらペニンシュラだろうが中野サンロードだろうが勝負には変わりないッ。
一番ましな無●良品のブラとパンツをつけて、一番ましなワンピースを着て、超特急でメイクして、夜の中、必死に走ってここまで来た。
めったにないチャンスを逃さないために。
それなのに。
学生で混雑する店内で、ようやくみつけた王子様は、なんと松井連れだった。
そしてオトコふたりはテーブルいっぱいにスイーツを注文していた。
あたしはその前に座らされて、フォークとスプーンを握らされた。
そして・・・・・・
「じゃ、次。『イチゴとチョコレートのミルフィーユ』。これはナツキ担当ね。『食後のちょこっとシャーベット』はヒデキ、と・・・・・・」
「それの大盛りね」と松井が付け足す。
「『オオモリ』」とつぶやきながら、アンドリューがノートに走り書きしている。松井が横からのぞき込む。
「あーそうじゃねえよ。『大森』じゃなくて『大盛り』」
「『しゃあべっと大盛り』」
「そうそう。日本語書くのうまいじゃん」
って定食屋の品書きか?!
あたしはまったく自体が飲み込めずに、NY二大男子の顔と卓上のスイーツをかわるがわる眺めるほかなかった。
甘メンズ(ついさっきあたしが名付けたこのふたりのユニット名)は、次々にありったけのスイーツを注文しては少しずつ食べ、お互いの皿を交換したりノートになにか走り書きしたりしている。
スイーツを持ってくるウェイトレスは最初いぶかしそうにしていたが、途中から店長らしき男性がうきうきと皿を持ってき始めた。
悪い予感がする。
「ミシュラン偵察隊」と勘違いしてるんじゃないだろうか・・・・・・
「ねえ、あの・・・・・・どうしてこんなにスイーツばっか注文するの?」
あたしは恐る恐る聞いてみた。
なんでこんな夜中にあたしがそれを食べさせられてるの? とほんとは聞きたかったのだが。
アンドリューは無邪気な王子様そのものの瞳をあたしに向けて言った。
「もちろん、ビジネスのためだよ」
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コメント
はじめまして、マイリストに入れさせていただきました。これから、楽しみに読ませていただきます。
投稿 Wine | 2007年12月28日 (金) 23時37分
いつも続きが気になってしょうがないです!
ナツキちゃんの友達のお嬢様(名前忘れた(汗)がいいキャラしてると思います。
ナツキちゃん、アンドリューとられないようにガンバ!
投稿 ブラッキ | 2007年12月29日 (土) 19時35分