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#59 攻防戦

ぎい・・・・・・
と開いたスチールのドアの向こうに立っていたのは、白い王子・・・・・・・じゃなくて、表情も態度もささくれ立っている「黒アンドリュー」だった。

うわ・・・・・・な、なんか、ハクリョク・・・・・・

「いったいどういうことなんだ、ヒデキ?! なんでこんな時間にナツキがここにいるんだ?!」
まるでお父さんみたいなことを言う。
「どういうことって、それは・・・・・・」
松井が答えかけたのに、アンドリューは(自分で聞いておきながら)聞く耳持たない、って感じで、ぐいっとあたしの手首をつかんだ。
「ナツキ、帰るぞ。さあ、早く」

ってそれじゃ本格的にお父さんじゃないですか?!

「ちょ、ちょっとアンドリュー?! 帰るって、どこへ?」
「決まってるだろ、ホテルだよ。マンダリン・オリエンタル。君が来るって聞いてから、アパートを探すのに時間がかかるだろうと思って、とりあえず一週間部屋を取ってあったんだ」
・・・・・・んなっ?!
マンダリン・オリエンタルって・・・・・・最高級ホテルで一泊800ドルは下らないという噂(怜奈情報)の?!

そ、そんな・・・・・・身に余るご親切・・・・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・

と、王子についていきかけて、あたしはあわててその手を振り切った。
「あの、ちょっと聞きたいんだけど、アンドリュー。なんで、そんなふうなの?」

あたしの質問の意味がまるでわからない感じで、アンドリューは不思議そうな顔になった。
「『そんなふう』って? それ、日本語?」

うっ。そりゃまあ、正しい日本語じゃないかもしれませんが。

「だって、なんだか強引過ぎる・・・・・・ような。空港の出迎えもランチの予約も、ホテルとかも。ひと言もあたしに教えてくれなかった、じゃなかったの・・・・・かな?」
半分ありがたい気持ちもあったもんだから、あたしの抗議はなんだか中途半端だった(しかも日本語がヘタ過ぎた)。

アンドリューは余裕の笑みを浮かべて言った。
「そりゃあ、サプライズってやつさ。日本人の女の子が夢を求めてニューヨークへやってきたんだ。何か力になりたい、とっておきの方法で。そう思ったんだよ」

それから、甘えるトイプードルみたいな表情を作った。
「君のためを思ってやったことなのに・・・・・・いけないかな?」

うわ・・・・・・なんかこういうとこ、怜奈の自爆攻撃に似てる。
日本女子代表としては、やはりここはクラッとくるのがフツウのリアクションだろう・・・・・・

「残念だけど。こいつはここに居候するってことで話がついてんだ」
成り行きを見守っていた松井が、アンドリューの前に一歩踏み出してそう言った。

「悪いけど、お前には渡せないよ」

え?

な、なんかいま・・・・・・ちょっとどきっとしたぞ、あたし。

アンドリューの前に立ちふさがる松井が、ちょい不良(ワル)でクールな王子に見えてしまうのは幻覚だろうか。

気がつけば、なんでだかわかんないけど、あたしを巡ってニューヨーク二大男子が火花を散らしてる。

こ、これは・・・・・・
人生最大のモテ期到来?!

「だっていまから『水戸一』のやきそばパン、作ってもらわなきゃならねーんだから」

ってあたしじゃなくてパンかよ?!

アンドリューは青い目を急にきらりと光らせた。
「なんだって? やきそばパン??!! ずるいぞヒデキ!ヌケガケか?!」

あたしは「抜け駆け」という日本語をフツウに使う外国人を初めてみた。
ってかこのふたりの攻防は、あたしじゃなくてやきそばパンを巡ってないか?!

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コメント

`;:゙;`;:゙;`;:゙;`ヽ(゚∀゚ゞ)ブッ
・・・ドキドキしながら読んでたのに オチが焼きそばパン・・・('∀')・・・・チーン。
とかなんとか言って 松井は どぉにかして夏樹をアンドリューに渡してはならないと言ったセリフだと思った♬♫

投稿: こと。 | 2008年4月19日 (土) 15時14分

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